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技術情報・基礎知識
樹脂材料樹脂の切削加工で用いられる主な樹脂材料の種類と特徴を徹底解説
樹脂切削加工で使われる材料は、汎用的なものから特殊な環境に耐える超高性能なものまで多種多様です。「強度の高いプラスチックはどれか」「電気を絶縁したい」「コストを極限まで抑えたい」など、目的に応じた正しい材質選定が製品の成否を分けます。本記事では、樹脂切削で用いられる主要なプラスチック材料16種類を、3つのグループ(汎用・エンプラ・スーパーエンプラ)に分けてそれぞれの特徴と用途を徹底解説します。
1. 汎用プラスチック(耐熱100℃未満:コスト重視・一般的な用途)
安価で加工性が良く、一般的な形状確認の試作や、過酷な負荷がかからない部品に広く用いられます。
アクリル(PMMA)
プラスチックの中で最高クラスの透明度を持ちます。ガラス以上の光線透過率を誇り、切削後に磨き加工を施すことで美しい透明感が得られます。ただし、衝撃に弱く割れやすい性質があります。
- 主な用途: 流路モデル、レンズ、ディスプレイカバー
ポリカーボネート(PC)
アクリルと同等の優れた透明性を持ちながら、航空機の窓や防弾パネルに使われるほどの「圧倒的な耐衝撃性(割れにくさ)」を兼ね備えています。ただし、薬品(アルコールなど)に触れるとひび割れ(ケミカルクラック)を起こしやすい点に注意が必要です。
- 主な用途: 耐衝撃カバー、電気電子部品、各種試作
塩化ビニル(PVC)
耐薬品性、耐食性に極めて優れた材料です。酸やアルカリに対して非常に強いため、化学工場や半導体工場の設備部品によく使われます。コストも安価ですが、熱には弱いです。
- 主な用途: 薬液タンク、配管部品、ダクト
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
家電製品や自動車の内装などに最も広く使われているプラスチックです。切削加工性が非常に良く、バリが出にくいため精密な加工が可能です。塗装やメッキ、接着などの後加工もしやすい万能素材です。
- 主な用途: 家電・自動車の試作筐体、治具
ポリエチレン(PE) / ポリプロピレン(PP)
どちらも比重が1未満で水に浮くほど軽く、耐薬品性と耐水性に優れています。PPはPEよりも少し硬く、耐熱性(約100℃)があります。どちらも表面が滑らかで接着剤が効きにくい(難接着性)という特徴があります。
- 主な用途: まな板、化学薬品容器、食品加工機械部品
2. エンジニアリングプラスチック(耐熱100℃以上:強度・耐摩耗性重視)
工業用部品や金属代替として、機械的強度や耐摩耗性が求められる場所で使用されます。
POM(ポリアセタール)
樹脂切削の「王道」素材です。高い機械的強度と耐摩耗性、優れた寸法安定性を持ち、バリが出にくくサクサク削れるため、精密部品の第一選択肢となります。
- 主な用途: ギヤ(歯車)、ネジ、ブッシュ、治具部品
MCナイロン(モノマーキャストナイロン)
非常に高い強度と自己潤滑性(滑りやすさ)を持ち、摩耗に強いため大型の駆動部品によく使われます。ただし吸水性が高く、水分を吸うと寸法がわずかに変化(膨張)する特性があります。
- 主な用途: ローラー、車輪、ガイドレール
66ナイロン(PA6 / PA66)
MCナイロンに似た性質を持つ押し出し成形品のナイロンです。MCナイロンよりも安価ですが、内部の残留応力による加工時の反りや、吸水による寸法変化に注意が必要です。
- 主な用途: 一般機械部品、自動車用機能部品
PET(ポリエチレンテレフタレート)
ペットボトルの素材として有名ですが、切削用の板や丸棒(結晶性PET)は非常に硬く、寸法安定性に優れています。ナイロンと違って吸水性がほとんどないため、水回りの精密部品に適しています。
- 主な用途: 食品加工機械のパーツ、絶縁スイッチ部品
超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)
ポリエチレンの分子量を極限まで高めた素材です。プラスチックの中でトップクラスの「耐摩耗性」と「滑りやすさ」を持ち、衝撃にも非常に強いです。ただし、非常に柔らかいため超精密な切削加工には不向きです。
- 主な用途: コンベアのガイド、スライドレール、ホッパーのライニング
3. スーパーエンジニアリングプラスチック(耐熱150℃以上:過酷な環境用)
宇宙航空、半導体製造、医療など、極めて高い耐熱性や耐薬品性、強度が求められる最先端分野で使用されます。
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
スーパーエンプラの代表格で、250℃以上の高温に耐え、強靭で、ほとんどの化学薬品に侵されません。金属に匹敵する性能を持ちますが、材料費が非常に高価です。
- 主な用途: 半導体製造装置部品、医療用手術器具、航空機部品
PTFE(テフロン / 四フッ化エチレン)
フッ素樹脂の代表格で、優れた耐薬品性、耐熱性(約260℃)に加え、「全く物がくっつかない(非粘着性)」と「極めて低い摩擦係数(滑りやすさ)」を持ちます。非常に柔らかく、熱で膨張しやすいため寸法出しが難しい材料です。
- 主な用途: パッキン、ガスケット、半導体薬液ライン
PPS(ポリフェニレンサルファイド)
200℃前後の優れた耐熱性と、高い剛性(硬さ)、優れた難燃性を持ちます。ガラス繊維を配合してさらに強度を高めたグレードが多く、自動車のエンジン周りや電子部品に多用されます。非常に硬いため、加工時の刃物の摩耗が早いです。
- 主な用途: 自動車用電気部品、ポンプインペラー
PEI(ポリエーテルイミド / ウルテム)
琥珀色の透明感を持つ素材で、高い耐熱性(約170℃)と優れた電気絶縁性、耐加水分解性(熱水や蒸気に強い)を持ちます。医療機関での繰り返し滅菌処理にも耐えられます。
- 主な用途: 医療機器部品、航空機の内装部品、電気検査治具
PBI(ポリベンズイミダゾール)
プラスチックの中で最高峰の耐熱性(宇宙空間や300℃〜500℃の超高温環境)を誇る究極の樹脂です。圧倒的な硬さと強度を持ちますが、加工が極めて難しく、材料価格も超高額です。
- 主な用途: 半導体製造装置の核心部品、液晶製造ライン
樹脂材料を選定する際の3つのポイント
図面設計や試作を行う際、どの材料にするか迷った場合は、以下の3つの優先順位で絞り込んでいくと失敗がありません。
- 使用環境の「温度」を確認する: 部品がさらされる熱が100℃を超える場合はエンプラ(POMやMCナイロン)、150℃や200℃を超える場合はスーパーエンプラ(PEEKなど)が必要になります。
- 「水分」や「薬品」への接触の有無: 常に水に濡れる環境なら吸水性の高いMCナイロンは避け、POMや塩ビ(PVC)を選びます。また、溶剤や薬品を使用する場合は、耐薬品性に優れたPEEKやPP(ポリプロピレン)が候補に挙がります。
- コストと性能のトレードオフ: PEEKなどの高性能な材料は魅力的ですが、過剰スペックになると製品コストが跳ね上がります。「POMで十分に代用できないか」など、必要最低限のスペックを満たす最安の材質を選ぶのが鉄則です。
まとめ
樹脂切削加工で用いられる材料は、このようにコストパフォーマンス重視の汎用プラスチックから、過酷な環境に耐えるスーパーエンプラまで非常に多岐にわたります。
選定の際は、「まず何度までの熱に耐える必要があるか(耐熱性)」を基準にグループを絞り込み、その後に「強度」「透明性」「耐薬品性」「コスト」などのバランスを見て決定するのが確実です。それぞれの材質の強みと弱みを理解し、最適なプラスチック材料を選択してください。