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基礎知識樹脂/プラスチックの切削加工は「熱」に注意が必要!金属と樹脂切削の違い

製造現場において、金属加工の経験がある方でも、樹脂(プラスチック)の切削で思わぬ驚きを経験をすることがあります。その最大の要因は「熱」に対する挙動の違いです。

樹脂は金属に比べて熱に非常に敏感で、加工中の温度管理を怠ると、寸法が出ないだけでなく、製品そのものを台無しにしてしまいます。本記事では、金属加工と比較しながら、樹脂切削における熱の影響と対策を解説します。

1. 樹脂と金属、決定的な「熱的特性」の差

まず、材料としての物理特性がどれほど違うのかを把握しましょう。

特性項目金属(例:アルミ・鋼)樹脂(例:POM・PC)樹脂加工への影響
融点・軟化点高い(600℃〜1500℃)低い(100℃〜300℃前後)わずかな摩擦熱で溶ける
熱伝導率高い(熱が逃げやすい)極めて低い(熱がこもる)刃先に熱が集中しやすい
熱膨張係数低い高い(金属の5〜10倍)温度変化で寸法が激変する

金属は熱を逃がしてくれますが、樹脂は「熱を溜め込み、かつ大きく膨張する」という、切削加工にとっては非常に厄介な性質を持っています。

2. 「熱」が引き起こす樹脂切削の3大トラブル

樹脂加工中に温度が上がると、以下のようなトラブルが発生します。

① 溶着とバリの発生

熱伝導率が低いため、摩擦熱が逃げ場を失い刃先に集中します。樹脂の融点を超えると、切り屑が溶けて刃物にこびりつく「溶着」が起こり、仕上げ面がガタガタになったり、巨大なバリが発生したりします。

② 寸法精度の狂い(熱膨張)

樹脂の熱膨張率は金属の約10倍です。加工中に熱を持った状態で寸法を測り、設計通りだと思っても、冷却されて常温に戻ると「縮んで小さくなっている」という事態が頻発します。

③ クラック(ひび割れ)と残留応力

局所的な加熱と冷却が繰り返されることで、材料内部にストレス(残留応力)が溜まります。これが原因で、加工後しばらくしてから「勝手にひび割れる(ケミカルクラック含む)」現象が起こります。

3. 樹脂の切削加工でとられる熱対策の例

樹脂切削を成功させるためには、いかに「熱を出さないか」「熱を逃がすか」が鍵となります。

対策例①:シャープな工具・刃物の選定する

樹脂専用の鋭い刃先を持つエンドミルを使用します。金属用のような「強度重視」の刃物ではなく、「切れ味重視(すくい角が大きいもの)」を選ぶことで、摩擦抵抗を最小限に抑えます。

対策例②:切削条件を高送り・低回転とする

「高送り・低回転」が基本です。回転数を上げすぎると摩擦熱が増えるため、一刃あたりの送り量を大きくし、熱が材料に伝わる前に切り屑として排出するイメージで加工します。

対策例③:加工時の冷却を徹底する

基本的には水溶性切削油やエアブローを積極的に使用します。ただし、樹脂の種類(アクリルやポリカなど)によっては、切削油に含まれる成分でひび割れを起こす「環境応力亀裂」に注意が必要です。

対策例④:アニール処理(歪み取り)を行う

精密な寸法が求められる場合は、加工前や加工の合間に材料を一定温度で加熱・徐冷する「アニール処理」を行い、内部応力を除去します。

まとめ

樹脂切削は、金属の常識が通用しない場面が多々あります。特に「熱」に関しては、「溶けやすい」「膨張しやすい」「熱が逃げない」という三拍子が揃っていることを常に意識しなければなりません。

材料ごとの融点や熱膨張率を正しく理解し、切れ味の良い刃物と適切な冷却を選択することが、高品質な樹脂加工への近道です。

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