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技術情報・基礎知識

金型設計製造コストを削減する金型構造とは|射出成形のコストダウン設計を解説!

射出成形のコストは、金型構造の見直しで大幅に削減できます。「金型費が高すぎて量産化を見送った」「部品単価が下がらない」「他社と比べて高い見積もりだった」──こうした課題は、金型構造の設計次第で解決できる可能性があります。

この記事では、創業60年・受託成形多数の株式会社ヤマデンが、金型構造の見直しによる製造コスト削減手法を6つの軸で体系的に解説します。発注前の検討材料として、設計者・購買担当者にとって即戦力となるリファレンスです。

1. 射出成形のコストはどこで決まるか

1-1. コスト構造を3要素に分解する

射出成形品の総コストは、大きく次の3要素に分解されます。

要素内容コストの性質
金型費(イニシャル)製品形状ごとに製作する専用金型初期投資、ロット数で按分される
材料費樹脂・添加剤・付属品製品1個ごとに変動
成形加工費(ランニング)機械稼働費・人件費・電気代サイクルタイムで決まる

これらは独立した要素ではなく、金型構造が3要素すべてに影響します。例えば、取り数を増やせば金型費は上がりますが、1個あたりの加工費は下がります。

1-2. 量産ロット数によってコスト構造が変わる

ロット数によって、どのコスト要素が支配的かが変わります。

ロット数支配的なコスト最適化の方向性
〜数百個金型費簡易金型・切削加工の検討
数千〜数万個金型費+材料費標準金型+取り数最適化
数十万個以上金型費+材料費+加工費ホットランナー+多数個取り+サイクル短縮

どのロット数で生産するかを最初に確定することが、金型構造の最適化の出発点です。

2. コスト削減① 取り数(キャビティ数)の最適化

2-1. 取り数とは

取り数とは、1つの金型に何個のキャビティ(製品の形状)を作るかという数字です。1個取り・2個取り・4個取り・8個取り・16個取り・32個取りなど、2の倍数で設計するのが一般的です。

2-2. 取り数を増やすと下がるコスト・上がるコスト

項目取り数増加の影響
金型費上がる(キャビティ数に応じて加工工数増)
1個あたりの加工費下がる(1ショットで複数個生産)
サイクルタイムほぼ変わらない(冷却律速)
材料効率上がる(ランナー比率が下がる)
品質管理難易度上がる(バランス調整が必要)

2-3. ロット数別 取り数の最適解

  • 月産100〜500個:1個取り(金型費を最小化)
  • 月産1,000〜5,000個:2〜4個取り
  • 月産1万〜5万個:4〜8個取り
  • 月産10万個以上:16〜32個取り+ホットランナー検討

2-4. ファミリーモールド(異形状を1金型で)

ファミリーモールドとは、異なる形状の製品を1つの金型で同時に成形する設計です。1つの製品の各部品(例:右ハウジングと左ハウジング)をまとめて作る場合に有効です。

  • 金型費を一体化することで初期投資を削減
  • 部品供給のタイミングがそろう
  • ただしキャビティ間の充填バランス調整が難しい

3. コスト削減② ランナー方式の見直し(コールド/ホット)

3-1. コールドランナーとホットランナーの違い

ランナーは溶融樹脂をスプルーからゲートまで運ぶ流路で、方式によってコストが大きく変わります。

項目コールドランナーホットランナー
仕組みランナー部も冷却し、製品と一緒に取り出すランナー部を加熱維持し、樹脂を液状で保持
初期コスト安い高い(追加投資100〜500万円)
材料ロス発生(ランナーがスクラップに)ほぼゼロ
サイクルタイム長め(ランナー冷却も必要)短い(ランナー冷却不要)
メンテナンス容易ヒーター・センサー管理必要
対応樹脂ほぼ全樹脂熱に敏感な樹脂は不向き

3-2. ホットランナー導入の損益分岐点

ホットランナー導入により、ランナースクラップ削減+サイクル短縮で量産コストが下がります。投資回収の目安は次のとおりです。

  • 年間生産数:10万個以上
  • 樹脂単価:1,000円/kg以上(PEEK・PPS等の高価樹脂で効果大)
  • ランナー比率:製品重量の30%以上

汎用樹脂で生産量が少ない場合はコールドランナーが有利。エンプラ以上の高価樹脂で大量生産する場合はホットランナーが圧倒的に有利です。

4. コスト削減③ アンダーカット処理の簡略化

4-1. アンダーカットとは

アンダーカットは、金型のパーティング面の開閉だけでは取り出せない形状(横穴、突起、凹みなど)のことです。スライドコアや傾斜ピンなどの特殊機構が必要になります。

4-2. スライドコア・傾斜ピンが金型費を押し上げる

アンダーカット処理機構は、それ自体が複雑な機構部品で、1箇所あたり金型費を10〜50万円押し上げます。複数のアンダーカットがある製品では金型費が大幅に上がります。

4-3. 製品形状の微修正でスライドを撤廃できるケース

実は、製品設計の段階で次のような微修正をすることで、アンダーカットを撤廃できることが多くあります。

  • 横穴を斜め穴に変更(パーティング面から抜けるよう設計)
  • 凹みの深さを浅くして抜き勾配で対応
  • 外側突起を分割線をまたぐように配置
  • 段付きの段差を緩やかな勾配に変更

4-4. 抜き勾配を確保するだけで金型構造はシンプルになる

抜き勾配(テーパー角度)が0°だと無理抜きや特殊機構が必要ですが、0.5〜1°の抜き勾配があれば標準的な金型で取り出せます。設計時の早い段階で抜き勾配を確保することが重要です。

4-5. 強制離型・置き駒など簡易構造で対応

簡単なアンダーカットなら、次の簡易構造で対応できます。

  • 強制離型:軽微なアンダーカットを樹脂の弾性で抜く
  • 置き駒:手動で取り外す駒で複雑形状を実現
  • カセット構造:交換式の駒で複数製品に対応

5. コスト削減④ 冷却回路の最適化でサイクル短縮

5-1. 冷却時間は1サイクルの60〜70%を占める

射出成形の1サイクル時間(30〜50秒)のうち、冷却時間が60〜70%を占めます。つまり冷却時間を10%短縮できれば、生産能力が約10%向上し、加工費が10%下がる計算になります。

5-2. 冷却水路の配置設計

金型内の冷却水路の配置が冷却効率を決めます。

  • 製品キャビティから等距離(10〜15mm)に配置
  • 入口と出口の温度差を5℃以内に保つ
  • 水路径は8〜12mmが標準
  • 肉厚部にはより密な冷却水路を配置

5-3. 3Dプリント金型(コンフォーマル冷却)

近年、金属3Dプリンタで作られた「コンフォーマル冷却金型」が普及し始めています。製品形状に沿った3次元の冷却水路を作れるため、従来比でサイクルタイム20〜40%短縮の事例が報告されています。初期投資は高めですが、量産品では投資回収が見込めます。

5-4. 製品設計での冷却効率向上

製品の肉厚均一化は冷却効率を直接改善します。

  • 肉厚を均一化(最大肉厚と最小肉厚の比0.6以下)
  • 不要な肉厚部はリブで補強する設計に変更
  • コーナーRを大きめに取って応力集中を緩和

6. コスト削減⑤ 簡易金型・アルミ金型という選択肢

6-1. 簡易金型とは

簡易金型は、本金型より製作期間とコストを抑えた金型で、試作や少量生産向けの選択肢です。次のような工夫で簡略化します。

  • アルミ材で製作(鋼材より加工が早い・安い)
  • モールドベース(金型枠)を標準化して共通化
  • カセット式で複数製品に対応
  • スライド機構を置き駒で代替

6-2. アルミ金型と鋼材金型の比較

項目アルミ金型鋼材金型
金型費本金型の1/3〜1/2標準(高い)
製作期間2〜4週間8〜12週間
寿命(ショット数)1,000〜100,000ショット1,000,000ショット以上
対応樹脂汎用樹脂中心全樹脂(PEEK・PPS含む)
精度汎用部品レベル高精度部品対応可

6-3. ロット100〜10,000個ゾーンで効くのは簡易金型

簡易金型は、年間生産数100〜10,000個の中間ゾーンで圧倒的にコストメリットがあります。試作品の市場投入から、量産化の判断まで、簡易金型でフレキシブルに対応できます。

6-4. 製作期間2〜4週間で量産入りできる

簡易金型は鋼材の標準金型と比較して製作期間が大幅に短く、新製品の市場投入を早められます。

7. コスト削減⑥ 製品設計段階で組み込むべき視点

金型単独ではなく、製品設計と一体で考えることが最大のコスト削減につながります。

7-1. 肉厚均一化

肉厚比0.6以下(最薄部と最厚部の比)を目標にすると、収縮・そり・ひけが大幅に減ります。リブの根元の肉厚は壁厚の0.5〜0.6倍以下が目安です。

7-2. 抜き勾配の最低限の確保

0.5〜1°の抜き勾配を最初から組み込んでおくと、金型構造が大幅に簡単になります。外観面でも視覚的にほぼ判別できない角度です。

7-3. パーティングラインの位置で金型構造が決まる

製品設計時にパーティングライン(金型の合わせ面)を意識すると、金型構造がシンプルになります。曲面・凹凸の少ない位置にパーティングを設定するのがコツです。

7-4. ゲート位置で材料費・外観・サイクルがまとめて変わる

ゲート位置は次の3要素に直結します。

  • 材料費(ランナー長で材料ロスが変わる)
  • 外観品質(ゲート痕の見えやすさ)
  • サイクルタイム(充填バランス)

8. VE提案の実例(ヤマデンの取り組み)

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9. 金型構造の見直し相談はヤマデンへ

ヤマデンでは、設計段階・試作段階・量産段階のどの時点からでもVE提案を承っています。

  • 設計初期:図面を見て構造改善・素材変更を提案
  • 試作段階:実機トライ結果から金型修正・条件最適化を提案
  • 量産中:歩留まり改善・サイクル短縮を提案
切削加工・成形・組立を一貫対応する強み ヤマデンでは切削加工・射出成形・電子組立を社内で一貫対応しています。「試作は切削、量産は成形」という段階的な工法切替も可能で、フェーズごとに最適なコスト構造を提案できます。
射出成形・プラスチック加工のご相談はヤマデンへ 「図面はあるが成形業者が見つからない」「試作1個だけで申し訳ない」「材料選びから相談したい」──どんな段階のご相談でも無料でお受けします。 TEL:042-682-2811(受付 9:00〜17:30、土日祝除く) 無料見積もり・お問い合わせ:https://yamaden-ltd.co.jp/form/estimate/

10. よくある質問(FAQ)

Q1. 金型構造の変更だけで本当にコストは下がりますか?

はい、当社の事例では金型費30%減、部品単価40%減を実現したケースがあります。製品形状を変えなくても、金型側の最適化だけで効果が出ることも多々あります。

Q2. 既存の金型を改造してコストダウンできますか?

可能なケースは多いです。例えば、取り数追加、ゲート位置変更、冷却水路追加などは既存金型でも対応できます。ただし金型の余裕(厚みや空きスペース)に依存します。

Q3. 簡易金型でも量産品質は確保できますか?

汎用樹脂・標準的な公差であれば、簡易金型でも十分な量産品質を実現できます。当社では年間数万個の量産で簡易金型を活用している実績があります。

Q4. VE提案の費用はかかりますか?

お見積もり段階での提案は無料です。実際に発注いただいた場合は、提案によって削減できた費用の範囲内で対応します。

Q5. 設計段階の早い時期から相談したほうがよい理由は?

製品形状が固まってからでは変更可能な範囲が限られますが、設計初期段階であれば抜き勾配・パーティング位置・ゲート位置など、コストに直結する要素を最適化できます。図面段階での相談で、平均20〜30%のコストダウンが見込めます。

まとめ

射出成形の製造コストは、金型構造の見直しで大幅に削減できます。取り数最適化・ランナー方式・アンダーカット処理・冷却回路・簡易金型・製品設計の6つの軸で、それぞれにコスト削減の余地があります。

ヤマデンでは創業60年の経験で蓄積したVE提案ノウハウで、お客様の製造コストを最大40%削減した実績があります。設計段階・試作段階・量産段階、どのフェーズからでも無料でご相談を承ります。