case
課題解決事例
材質転換クリーンルーム対応の非カーボン帯電防止樹脂材を用いることで、粉塵を防止
こちらは帯電防止素材を用いた精密成形品の課題解決事例です。
従来、お客様はクリーンルーム内で使用する搬送部品において、導電性モノキャストナイロンを採用されていました。しかし、この素材は導電性を付加するためにカーボン粉が充填されており、部品同士の摺動や接触によって微細なカーボン粉が剥離・飛散する「発塵」が深刻な課題となっていました。微細な炭素粉はクリーンルーム内の環境を汚染するだけでなく、精密機器の回路短絡(ショート)を誘発するリスクもあり、代替素材への切り替えが急務とされていました。また、ナイロン素材特有の高い吸水性により、季節や保管環境によって成形品の寸法が変動し、組付け精度にバラつきが生じるという設計上の問題も抱えておられました。
当社からは、カーボンを使用せずに帯電防止性能を発揮するポリアセタール(POM)ベースの素材「セミトロンESD225」を用いた成形をご提案いたしました。この素材はカーボンブラックなどの充填材に頼らず、ポリマー自体に持続的な静電気拡散性(ESD特性)を持たせているため、摩擦が生じても黒い粉塵が発生する心配が一切ありません。成形プロセスにおいては、POMベースの樹脂が持つ良好な流動性を活かしつつ、帯電防止剤が均一に分散するよう成形条件を最適化しました。これにより、製品のどの箇所を測定しても表面抵抗値が安定し、確実な静電気対策を可能にしています。技術的な大きな改善点として、素材の吸水率が挙げられます。一般的なナイロン6(PA6)の飽和吸水率が約 8.5%であるのに対し、今回採用したPOMベースの素材は約0.2& 程度と極めて低く、湿度の影響をほとんど受けません。この特性により、射出成形時において極めて高い寸法安定性を確保できるようになり、従来課題であった寸法変化による不具合を完全に解消しました。成形品のカラーもクリーム色に変更されたことで、汚れや摩耗状態の視認性も向上し、クリーンルーム内での運用に最適な仕様へとアップデートされました。今回の素材変更と成形条件の最適化により、お客様からは「炭素粉の脱落が皆無になり、歩留まりが劇的に向上した」との高い評価をいただきました。また、寸法安定性の向上により、治具や自動機への組み込みがスムーズになった点も大きな導入メリットとなりました。当社では、帯電防止性能とクリーン度の両立が求められる高度な製造環境に対し、樹脂の物性を熟知した専門家として、最適な材料選定と精密成形技術によるトータルソリューションを提供いたします。発塵や寸法のバラつきでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

