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基礎知識射出成形の成形条件とは|温度・圧力・速度の最適な設定方法を解説!
「射出成形機の条件設定がうまくいかない」「不良品が出るがどのパラメータを動かせばいいかわからない」──成形条件は射出成形品の品質を決定づける最重要要素ですが、樹脂・金型・製品形状ごとに最適値が変わるため、設定のコツをつかむまでに時間がかかります。
この記事では、創業60年・受託成形多数の株式会社ヤマデンが、射出成形の4大成形条件(温度・圧力・速度・時間)の設定方法を現場目線で解説します。代表樹脂の標準成形条件表や、不良が出た時の調整手順も網羅しているため、技術担当者の実務リファレンスとして活用できます。
この記事でわかること
- 成形条件の4大要素(温度・圧力・速度・時間)の意味と役割
- 樹脂温度(シリンダー温度)の設定方法と注意点
- 射出圧力・保圧の決め方の手順
- 射出速度・冷却時間の最適化
- 代表樹脂8種の標準成形条件一覧表
- 不良が出た時のパラメータ調整チェックリスト
1. 射出成形の成形条件とは
1-1. 成形条件の定義と4大要素
成形条件とは、射出成形機に設定する温度・圧力・速度・時間など、各工程のパラメータの総称です。樹脂を溶かし、金型に充填し、冷却して取り出すまでの一連の動作を、これらの条件で制御します。
成形条件は大きく次の4要素に分類されます。
| 要素 | 主なパラメータ | 品質への影響 |
| 温度 | シリンダー温度・金型温度・樹脂温度 | 流動性、結晶化、表面状態 |
| 圧力 | 射出圧力・保圧・背圧・型締め力 | 充填性、ひけ、バリ、寸法精度 |
| 速度 | 射出速度・スクリュー回転数 | 表面外観、ウェルドライン、ジェッティング |
| 時間 | 射出時間・保圧時間・冷却時間 | サイクル、ひけ、そり、寸法安定性 |
1-2. 成形条件と品質の関係
成形条件は単独で動くのではなく、相互に作用します。たとえば射出速度を上げると、せん断発熱で樹脂温度が上がります。樹脂温度が上がると粘性が下がり、バリが出やすくなる──このようにすべてのパラメータが連動しているため、変更の影響を理解したうえで調整する必要があります。
2. 温度条件の設定方法
2-1. シリンダー温度の設定
シリンダー温度は、樹脂を加熱して溶融状態にするためのヒーター温度設定です。シリンダーは通常3〜5ゾーンに分かれており、ホッパー側からノズル側に向かって段階的に温度を上げていきます。
| ゾーン | 設定温度の目安 | 役割 |
| 後部(ホッパー側) | 推奨温度より20〜30℃低め | 固体ペレットの予熱、ブリッジ防止 |
| 中部 | 推奨温度の中央値 | 可塑化(樹脂を完全に溶融) |
| 前部(ノズル側) | 推奨温度の上限値 | 流動性の確保、計量安定化 |
| ノズル | 前部と同等またはやや低め | 樹脂垂れ・コールドスラグ防止 |
シリンダー温度の設定で注意すべきは「滞留時間」です。樹脂がシリンダー内に長く滞留すると熱分解が進み、変色・黒条・黒点が発生します。一般的に滞留時間は10分以内に抑えることが推奨されます。
2-2. 金型温度の設定
金型温度は成形品の品質を大きく左右します。金型温度が高いほど樹脂が流動しやすく、表面の転写性が向上しますが、冷却時間が長くなりサイクルが伸びます。逆に低すぎると、ウェルドラインやショートショットの原因になります。
| 樹脂種類 | 金型温度の目安 |
| PP(汎用) | 40〜60℃ |
| ABS | 50〜80℃ |
| PC | 80〜120℃ |
| POM | 80〜100℃ |
| PA6・PA66 | 80〜100℃ |
| PBT | 80〜100℃ |
| PPS | 130〜150℃ |
| PEEK | 160〜200℃ |
| PET(透明) | 5〜15℃(急冷必要) |
2-3. 樹脂温度の実測の重要性
シリンダー温度の設定値と実際の樹脂温度には差があります。射出時のせん断発熱により、樹脂の実温度は設定値より10〜40℃高くなることがあります。特にPEEK・PPS・PESなどのスーパーエンプラでは差が大きく、必ず樹脂温度の実測(パージ温度測定)で確認することが重要です。
3. 圧力条件の設定方法
3-1. 射出圧力(1次圧力)
射出圧力は溶融樹脂を金型キャビティに充填する圧力です。一般的に60〜180MPa程度で設定しますが、樹脂・形状・流動長によって大きく変動します。
設定の基本手順は次のとおりです。
- ①圧力を低めに設定し、ショートショット(充填不足)の状態から開始する
- ②射出速度が安定するまで圧力を徐々に上げる
- ③オーバーパック(過充填)にならない値で固定する
射出圧力が高すぎると、金型キャビティ内に過剰な樹脂が詰め込まれ、バリ・離型不良・残留応力が発生します。低すぎるとショートショットや寸法不良の原因になります。
3-2. 保圧(2次圧力)の決め方
保圧は、充填後に樹脂の冷却収縮分を補うための圧力です。一般的に射出圧力の1/2〜1/3程度に設定します。
保圧の役割は主に2つあります。
- ①ひけ・ボイドの防止(冷却収縮分の樹脂補充)
- ②寸法安定化(成形収縮率のコントロール)
保圧の設定手順は、充填速度で85〜95%まで充填し、その後保圧に切り替えるのが基本です。切替位置はV-P切替(速度から圧力への切替)と呼ばれ、ストローク位置で設定します。
3-3. 背圧の設定
背圧は計量時にスクリューにかける圧力で、樹脂の混練と計量安定性を左右します。一般的に5〜15MPa程度ですが、強化材入り樹脂や高粘度樹脂では背圧を高めに設定します。
3-4. 型締め力の選定
型締め力は、射出時の樹脂圧で金型が開かないように押さえる力です。必要型締め力は、成形品の投影面積×成形機の射出圧力/係数で計算されます。一般的には次の式で目安が出ます。
| 型締め力の目安計算式 型締め力(kN)= 成形品投影面積(cm²)× 単位面積あたり必要圧力(kN/cm²) 単位面積あたり必要圧力:汎用樹脂4〜6、エンプラ6〜8、スーパーエンプラ8〜10 |
4. 速度条件の設定方法
4-1. 射出速度の基本
射出速度はキャビティへの樹脂充填速度です。速いほど表面が滑らかになりますが、ジェッティング・バーンマーク・バリの原因にもなります。
| 成形品の特徴 | 射出速度の目安 |
| 薄肉・流動長が長い | 速い(充填しきる前に固化を防ぐ) |
| 厚肉・大型 | 遅い(ジェッティング防止、ガス抜き優先) |
| 精密・寸法精度重視 | 中速一定 |
| 透明品(PMMA・PET) | 遅め(フローマーク・白化防止) |
4-2. 多段射出速度プログラム
複雑な形状の成形品では、充填過程で射出速度を変化させる「多段射出」が有効です。一般的なプログラム例は次のとおりです。
- 第1段(ゲート通過まで):低速(ジェッティング防止)
- 第2段(キャビティ充填):中速〜高速(フローマーク防止)
- 第3段(充填末端):低速(バリ・バーンマーク防止)
5. 時間条件の設定方法
5-1. 射出時間
射出時間は、樹脂を金型に充填し終えるまでの時間です。射出速度と射出量から自動的に決まります。設定値ではなく結果として現れるパラメータです。
5-2. 保圧時間
保圧時間はゲートシール時間(ゲートが冷えて樹脂が逆流できなくなるまで)に合わせて設定します。短すぎるとひけ・寸法不良、長すぎるとサイクル延長になります。
5-3. 冷却時間
冷却時間は1サイクル全体の60〜70%を占める、最も重要な時間パラメータです。冷却が不十分だと取り出し時の変形、長すぎるとサイクル延長による生産性低下を招きます。
冷却時間の目安は、成形品の最大肉厚と樹脂の熱伝導率から計算しますが、現場では「樹脂温度から取り出し可能温度まで下がる時間」を実測して決定します。
6. 代表樹脂別 標準成形条件一覧
以下は代表的な樹脂8種の標準成形条件の目安です。樹脂メーカー・グレードによって最適値は異なるため、必ず樹脂メーカーの推奨条件を確認してください。
| 樹脂 | シリンダー温度 | 金型温度 | 乾燥条件 |
| PP | 200〜240℃ | 40〜60℃ | 不要(吸湿しにくい) |
| ABS | 220〜260℃ | 50〜80℃ | 80℃×2〜4時間 |
| PC | 280〜320℃ | 80〜120℃ | 120℃×4時間以上 |
| POM | 190〜220℃ | 80〜100℃ | 80℃×2〜3時間 |
| PA66 | 270〜290℃ | 80〜100℃ | 80℃×4時間以上 |
| PBT | 240〜270℃ | 80〜100℃ | 120℃×3〜4時間 |
| PPS | 310〜340℃ | 130〜150℃ | 150℃×3時間以上 |
| PEEK | 370〜400℃ | 160〜200℃ | 150℃×3〜4時間 |
7. 不良が出た時の成形条件 調整チェックリスト
成形不良が発生した時、どのパラメータを動かせばよいかをまとめた現場用チェックリストです。
| 不良名 | 優先的に調整するパラメータ |
| ひけ | 保圧UP・保圧時間延長・金型温度DOWN・冷却時間延長 |
| バリ | 射出圧力DOWN・保圧DOWN・型締め力UP |
| ショートショット | 樹脂温度UP・射出速度UP・射出圧力UP・金型温度UP |
| ウェルドライン | 樹脂温度UP・金型温度UP・射出速度UP・ガス抜き改善 |
| ジェッティング | 射出速度DOWN(特に初期)・ゲート拡大 |
| バーンマーク(焼け) | 射出速度DOWN・ガス抜き改善・樹脂温度DOWN |
| シルバーストリーク(銀条) | 乾燥強化・樹脂温度DOWN・背圧UP |
| そり・変形 | 金型温度均一化・冷却時間延長・保圧バランス調整 |
8. 成形条件設定の3ステップ実務手順
Step 1:基本条件を樹脂メーカー推奨値で設定
樹脂メーカーが公開する標準成形条件を初期値として入力します。シリンダー温度・金型温度はこの段階で決定します。
Step 2:ショートショット法で充填条件を出す
射出量を90%程度から徐々に増やし、充填末端まで樹脂が到達する射出量・射出圧力・射出速度を特定します。
Step 3:保圧で寸法・外観を最適化
保圧を加えて成形品のひけ・寸法・バリのバランスを取ります。保圧を上げてひけが消える点と、バリが発生する点の中間が最適値です。
| ヤマデンの成形条件設定の強み 創業60年で蓄積した約900種類の樹脂グレード、3,000型を超える成形実績から、お客様の樹脂・形状に最適な成形条件を初回トライから提案します。 難易度の高いPEEK・PPS・PESなどスーパーエンプラの成形条件設定も多数の実績があります。 |
| 射出成形・プラスチック加工のご相談はヤマデンへ 「図面はあるが成形業者が見つからない」「試作1個だけで申し訳ない」「材料選びから相談したい」──どんな段階のご相談でも無料でお受けします。 TEL:042-682-2811(受付 9:00〜17:30、土日祝除く) 無料見積もり・お問い合わせ:https://yamaden-ltd.co.jp/form/estimate/ |
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 成形条件はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
樹脂ロット切替時・季節変動(気温・湿度)時・金型メンテナンス後は必ず再確認します。安定生産中でも、月1回の条件記録の照合をおすすめします。
Q2. 樹脂を変更すると成形条件はすべて変わりますか?
はい、同じ用途でも樹脂が変わればシリンダー温度・金型温度・射出圧力すべてが変わります。場合によっては成形機自体の選定からやり直しが必要です。
Q3. 自社で条件出しに苦戦しています。相談できますか?
はい、ヤマデンでは樹脂選定・成形条件設定の相談を無料で受け付けています。図面段階・試作段階のどちらでも対応可能です。
Q4. CAE(流動解析)と現場の条件設定の関係は?
CAEは初期条件の予測に有効ですが、最終的な条件出しは実機トライが必要です。ヤマデンではCAE解析と実機トライを組み合わせて条件最適化を進めます。
まとめ
射出成形の成形条件は、温度・圧力・速度・時間の4要素が複雑に絡み合います。重要なのは樹脂メーカー推奨値から始めて、ショートショット法で充填条件を確定し、保圧で寸法・外観を整える3ステップ手順です。
難易度の高い樹脂や複雑な形状で成形条件にお困りの場合は、創業60年の経験を持つヤマデンへお気軽にご相談ください。