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技術情報・基礎知識
樹脂材料PEEK射出成形とは|成形条件・加工のポイントを解説!
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、耐熱260℃・優れた機械強度・耐薬品性を併せ持つ、スーパーエンプラの代表格です。航空宇宙・半導体製造装置・医療機器など、金属代替の高機能部品として採用が広がっています。
しかしPEEKは成形温度が380〜400℃と極めて高く、専用設備と高度な成形ノウハウを要する「成形が難しい樹脂」です。この記事では、創業60年・スーパーエンプラ成形実績多数の株式会社ヤマデンが、PEEK射出成形の特性・成形条件・現場で直面する課題と対策を網羅的に解説します。
1. PEEKとはどんな樹脂か
1-1. PEEKの基本特性
PEEK(Polyether Ether Ketone・ポリエーテルエーテルケトン)は、芳香族環とエーテル・ケトン基を持つ結晶性スーパーエンプラです。一般的な汎用樹脂と比較して、すべての性能が一段上のレベルにあります。
| 特性 | 数値・特徴 |
| 連続使用温度 | 約250℃(短時間なら300℃近くまで耐える) |
| ガラス転移温度 | 143℃ |
| 融点 | 343℃ |
| 引張強度 | 100MPa以上 |
| 耐薬品性 | 強酸・強アルカリ・有機溶剤に耐性 |
| 耐放射線性 | 原子炉部品にも採用される高耐性 |
| 難燃性 | UL94 V-0達成(自己消火性) |
| 低アウトガス性 | 真空・半導体用途に最適 |
1-2. PEEKが「金属代替」として注目される理由
PEEKは多くの場面で金属(特にステンレス・アルミ)の代替材料として採用されています。
- 軽量化:金属の1/4〜1/5の比重
- 錆びない:耐薬品環境でも長期使用可能
- 摺動性:自己潤滑性があり、無給油で使用できる
- 電気絶縁性:金属では実現できない絶縁機能
- 加工形状自由度:複雑形状を一体成形可能
1-3. PEEKの代表的なグレード
PEEKは用途に応じて複数のグレードが存在します。
| グレード | 特徴 | 主な用途 |
| 純PEEK | ベース樹脂、汎用 | ボルト・ナット、軸受、絶縁部品 |
| GF強化PEEK(ガラス繊維) | 剛性UP、寸法安定性UP | 構造部品、ハウジング |
| CF強化PEEK(炭素繊維) | 強度・剛性最大、軽量化 | 航空宇宙、構造部材 |
| 摺動グレード(PTFE・グラファイト配合) | 低摩擦・耐摩耗 | 軸受、ベアリング、ギア |
2. PEEK射出成形が「難しい」と言われる3つの理由
2-1. 理由①:成形温度が380〜400℃と極端に高い
一般的なプラスチックの成形温度は200〜300℃ですが、PEEKは融点343℃のため、成形温度を380〜400℃に設定する必要があります。この温度域では一般的な成形機・金型では対応できず、専用設備が必要です。
2-2. 理由②:金型温度180〜200℃の維持が必要
PEEKは結晶性樹脂で、結晶化度によって成形品の強度・耐熱性・寸法安定性が決まります。金型温度が低いと結晶化が不十分となり、強度低下や経時変形を起こします。金型温度を180〜200℃で維持するには、オイル温調機など専用設備が必要です。
2-3. 理由③:高温長時間の維持で熱分解リスク
PEEKは400℃を超えると徐々に分解が始まり、シリンダー内に長時間滞留すると熱分解物が黒点として混入します。生産中断時の処置や、シリンダー内の滞留時間管理が極めて重要です。
3. PEEK射出成形の成形条件(現場の設定値)
3-1. シリンダー温度の設定
PEEKのシリンダー温度設定は、後部から前部に向けて段階的に上げます。
| ゾーン | 設定温度 | ポイント |
| 後部(ホッパー側) | 330〜350℃ | ペレットのブリッジ防止のためやや低め |
| 中部 | 370〜390℃ | 完全な可塑化を達成 |
| 前部(ノズル側) | 380〜400℃ | 流動性確保、計量安定化 |
| ノズル | 380〜400℃ | コールドスラグ防止 |
3-2. 金型温度の設定と温調方式
PEEK成形では金型温度を160〜200℃で維持します。この温度域はヒーター方式では不安定なため、オイル温調機(オイル温調方式)が推奨されます。
- 結晶性を確保したい場合:180〜200℃(高結晶化)
- 非晶質にしたい場合:125〜140℃(透明性確保、急冷必要)
金型温度は成形品の特性に直接影響するため、用途に応じた設定が必須です。
3-3. 射出速度・射出圧力・保圧
| パラメータ | 設定目安 |
| 射出速度 | 中速〜やや高速(ジェッティング注意) |
| 射出圧力 | 100〜180MPa |
| 保圧 | 射出圧力の50〜70% |
| 保圧時間 | ゲートシール時間に合わせて10〜30秒 |
| 背圧 | 5〜15MPa(混練性確保) |
3-4. 乾燥条件(最重要)
PEEKは加水分解しにくい樹脂ですが、わずかな水分でも成形品の外観・物性に影響します。乾燥は必須です。
| PEEK標準乾燥条件 乾燥温度:150℃/乾燥時間:3〜4時間/露点:-30℃以下 除湿乾燥機(デシカント式)の使用を推奨。長時間乾燥は熱劣化を招くため、必要以上の乾燥は避ける。 |
3-5. スクリュー・バレルのクリーニング
PEEK成形前後のクリーニングは品質確保に不可欠です。
- PEEK成形前:HDPEなどでパージ→PEEKでパージ
- PEEK成形後:PEEKまたはPESでパージ→HDPEへ
- シリンダー停止時は必ずパージ材で置換(PEEKを残さない)
4. PEEK成形品に起きやすい不良と対策
4-1. 変色・焼け(高温分解)
PEEKの代表的な不良で、樹脂が400℃以上で長時間滞留すると分解して茶色〜黒色に変色します。
- 対策:シリンダー温度を適正範囲内で最も低く設定
- 対策:滞留時間を10分以内に抑える
- 対策:成形機停止時は必ずパージ
4-2. ひけ・残留応力
PEEKは結晶化収縮が大きく、肉厚部にひけが発生しやすい樹脂です。
- 対策:保圧UP・保圧時間延長
- 対策:金型温度を均一に維持
- 対策:肉厚均一化(設計レビュー)
4-3. そり・変形
結晶化の不均一が原因で、取り出し後に経時的に変形することがあります。
- 対策:金型温度を高めに維持(結晶化を完全に進める)
- 対策:アニール処理を実施
5. アニール処理(後熱処理)の効果と条件
5-1. アニール処理とは
アニール処理は、成形品を加熱炉で再加熱して、結晶化を完全に進めるとともに残留応力を除去する後処理です。PEEKでは特に重要な工程です。
5-2. アニール処理の効果
- 結晶化度を完全な値まで上げる(強度・耐熱性向上)
- 残留応力を除去(経時変形防止)
- 寸法安定性が向上(長期使用での寸法変化を抑制)
- 耐薬品性が向上(結晶部分は薬品に強い)
5-3. アニール処理の標準条件
| 段階 | 温度・時間 |
| 加熱 | 常温→200℃まで2時間かけて昇温 |
| 保持 | 200℃で2〜4時間保持 |
| 徐冷 | 炉内で6時間以上かけて徐冷 |
徐冷工程が極めて重要です。急冷すると新たな残留応力が発生し、アニール処理の意味がなくなります。
6. PEEK射出成形品の主な用途・実績
6-1. 半導体製造装置部品
半導体製造装置のウェハ搬送部品・吸着パッド・絶縁部品など、低アウトガス性と耐熱性が要求される用途で広く採用されています。
6-2. 航空宇宙部品
航空機内装部品、エンジン周辺部品、衛星部品などで、軽量化・難燃性・耐放射線性が活かされます。
6-3. 医療機器部品
オートクレーブ滅菌(135℃高温蒸気)に耐える医療機器部品、整形外科のインプラント部品、内視鏡部品など、生体適合性と耐熱性が必要な用途で採用されます。
6-4. 自動車部品
エンジン周辺・トランスミッション部品など、金属代替で軽量化と耐熱性を両立する用途で採用が進んでいます。
7. ヤマデンのPEEK加工実績
ヤマデンでは、PEEKの射出成形だけでなく、PEEK切削加工も多数の実績があります。
- PEEKのネジ切削加工|半導体装置向け高精度部品
- PEEK吸着ノズル加工|半導体搬送用パーツ
- PEEK製精密検査機器部品(±0.02精度対応)
- PEEK薄物加工品(航空機・医療機器・宇宙用途)
- PEEK偏芯加工品(半導体・航空機・宇宙)
| PEEKの試作は切削加工+成形のハイブリッド対応 PEEK射出成形は金型費が高額のため、試作・小ロットには切削加工が有効です。ヤマデンでは切削加工で試作→量産から射出成形へ移行する段階的アプローチを提案できます。 |
| 射出成形・プラスチック加工のご相談はヤマデンへ 「図面はあるが成形業者が見つからない」「試作1個だけで申し訳ない」「材料選びから相談したい」──どんな段階のご相談でも無料でお受けします。 TEL:042-682-2811(受付 9:00〜17:30、土日祝除く) 無料見積もり・お問い合わせ:https://yamaden-ltd.co.jp/form/estimate/ |
8. よくある質問(FAQ)
Q1. PEEK射出成形の最小ロットは?
PEEKは金型費が高額(標準金型で300万円以上)のため、最小ロットは数百個以上が一般的です。試作・少量の場合は切削加工をおすすめします。
Q2. PEEKの成形条件はメーカーで違いますか?
Victrex・Solvay・Evonik等で同等のPEEKでもグレードごとに最適成形条件が異なります。必ずメーカーの推奨成形条件に従ってください。
Q3. PEEKとPEKKの違いは?
PEKKはPEEKよりも結晶化速度を制御しやすく、より高い耐熱温度を持ちます。3Dプリンタや特殊用途で採用されています。
Q4. PEEKの再生材は使えますか?
PEEKは熱分解しやすいため、再生材使用は推奨されません。材料コストが高い樹脂ですが、品質確保のため新材使用が基本です。
Q5. PEEKの代替素材はありますか?
使用条件によりますが、PPS・PEI・PAIなどがPEEKに近い特性を持ちます。耐熱性が250℃以下で十分ならコスト面でPPSが有利です。
まとめ
PEEK射出成形は、高温成形・金型温度維持・乾燥条件の3点が成功の鍵を握ります。設備投資と成形ノウハウの両方が必要なため、PEEKを取り扱える成形メーカーは限られます。
ヤマデンでは創業60年で蓄積したスーパーエンプラ成形ノウハウで、PEEK射出成形・切削加工の両方に対応可能です。試作からの段階的な量産移行もご相談ください。